MUYA HOTEL
不思議な小窓を覗き、扉を開け、階段を上がる。
荷物を下ろし、靴からサンダルへ履き替える。
体が解放されると同時に気持ちもほどけていく。
ベッドにどさっと仰向けになり
小さく開けた窓から入り込んだ風と一緒に大きく息を吸う
その息を吐くと同時に感覚がひらいていく。
段々と心の解像度が上がっていく自分に気が付く。
月の光、風の音、路地の匂い。
海や温泉だけではないこの土地の魅力。
かつて人で溢れ、活気に満ちた気配はそこ彼処に。
さあ、この土地の息吹に触れる準備はできた。
ここからは、あなたが紡ぐ時間。
この町の名にもなっている
白い浜と海を横目に進むと
岩壁を繰り抜いた小さなトンネルが見えてきます。
そこを抜けると白浜の中で
最も古い1300年以上の歴史を持つ温泉地、
白浜町湯崎地区。
かつてこの地はいくつもの湯が湧き
「湯崎七湯」と呼ばれた温泉と、
鉛山鉱山と呼ばれる鉱山町としても栄え、
外湯は観光や湯治客、地元の人々の両方に愛され、
街は活気に溢れていたといいます。
湯崎で今も愛され続ける
「牟婁の湯」や「崎の湯」から
数分歩いた坂の途中に
「shirahama nokyo」と書かれたどこかモダンな
4階建の建物を見つけてみてください。
「MUYA」と書かれたサイン横の小窓を覗き込み、
扉を開け階段を上がると、
そこはあなたが今日お泊まりになる部屋です。
「MUYA」の目の前を通る
かつてのメインストリート、
この土地の氏神でもあり
温泉や鉱山の神を祀る山神社の参道も兼ねる
「本町通り」には米屋、酒屋、床屋、魚屋などが
今もひっそりと営みを続け、往時を偲ばせます。
あちらこちらに見かける
矢印の書かれた案内看板に
導かれるように裏路地に入ってみると、
そこには急な坂道に張り付いたように立つ家々と
その間を縫うように
細い階段や分かれ道がたくさん。
区画整理された無機質な直線の道は見当たらず、
細く有機的に絡み合った路地は
力強くもおおらかな人々の営みが感じられます。
知らない土地の見たことない景色に
わくわくしながら進むと
ぽっかりと開けた高台に出て海と空が現れたり、
小さな社の脇にある
木漏れ日のきれいな巨木に出会うことができます。
硫黄の匂いに手繰り寄せられるように進めば
源泉にもたどり着けるはず。
この土地を歩き、この土地で湯に浸かり、
この土地で身を横たえて眠る。
それは気持ちをほどき、感覚をひらくということ。
レジャーでもない、いつもの日常とも少し違う、
その土地の息吹に触れる時間。
どうぞどうぞ、ごゆっくり。